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なすがままの彼女。
それが風帝だというのは、確かに冗談めいた話だ。
(ほんと。笑っちまうような話だぜ)
「わしらにとっちゃ、セシリアちゃんは可愛い娘や妹だ。
あの男が傷つけたんなら、わしらは許しておけんよ」
「グスタさん」
戸惑ったように、泣き顔のセシリアが巨人を見上げる。
グスタは彼らしい陽気な笑みで、スミレ色の髪をごしごしと撫でた。
次に発せられた言葉は、近づいてきた者達の一人だ。
「水臭い。はじめから言ってくれれば良かったのに」
氷帝ロイ。
「貴女が風帝であることには変わりない。
ならば従わぬ理由など、どこにもない」
片腕を失ったフリード。
他の隊員も、口々にセシリアに声を投げる。
「風帝様。全て終わった後、みんなで話をしましょう。
私も貴女と話がしたい。セシリア」
「マスター」
セシリアの瞳から、また一つ涙が零れ落ちた。
そして、
「悔しいけど、わたしの力はオウリーに通じませんでした。
みなさんお願いします。力を貸してください!」
カインは確かに感じた。
自分の心に火が灯るのを。
そして、その声が全員の顔つきを変えたのを。
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