Chapter 20

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「嬢ちゃん。 ヨハンは必ず助ける。 あの馬鹿が目を覚ます前に、全部終わらせるんだ」 「はい!」 先行する三人を追って、カインは走った。 その場にセシリアを置いてゆくが、すぐに背後から抜き返された。 彼女は地を駆けているわけではない。 「流石は風帝様だ」 風を纏い、地面を這うように飛翔していた。 魔法は驚異的であっても、肉体がそれに比例して強いわけではないのだろう。 身体能力を、風魔法でカバーしているのだ。 図らずもカインが最後尾となった。 眼前で、戦闘が始まる。 「我が身に宿るは氷。 創始に出ずる力の前に……」 槍で突きかかるロイの詠唱が聞こえる。 初っ端から小細工なしの大技狙いだ。 オウリーは止まっているもののように、ロイの槍を指先で受け止める。 が、槍が水のように溶け落ちた。 最上級魔法の詠唱と並行して、魔武器の固有能力を発動させている。 液状化した槍は足もとに落ちると、そのまま数十の刃となって、オウリーに飛びかかる。
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