Chapter 20

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オウリーの回避は、洞察力からの予測ではなく、単に知覚と身体能力の所業だった。 それが逆に始末に負えない。 ロイは構わず詠唱を紡いでゆく。 その脇を抜ける影はフリード。 片腕を失っているにもかかわらず、疾風の如く鋼糸を魔神の首に巻きつける。 その瞬間、糸を伝って雷撃が魔神を襲った。 (直撃!) 魔神はピクリと眉を動かしただけで、苦痛のうめき声すら洩らさなかった。 凄まじい電撃に苛まれながら、糸に手をかける。 絶対に切れないはずのフリードの鋼糸が、それだけであっさり断ち切られた。 フリードが飛び退く。 入れ違いに飛び込むグスタ。 巨大な鉤爪がオウリーの頭蓋目がけて振り下ろされた。 ドラゴンの躯体さえ苦ともしないグスタの強撃。 だが、オウリーはそれさえ片手で受け止める。 「ぐっ……」 グスタの呻き。 彼の脇腹が爆ぜたのだ。 血飛沫が上がるなか、ダメージに構わずグスタが逆の腕を横殴りにする。 オウリーの身体はその力に地面を滑走した。 ロイの魔法がそこで完成した。
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