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蒼穹がどこまでも高く続いている。
風は心地よく髪を揺らし、どこか遠くからは小鳥の囀りが届く。
まるで全部が夢の中の出来事だった。
見たことも、聞いたことも……そして感じたことも。
ギルドの医務室で目を覚ましたとき、あれから五日が経っていた。
悪い夢を見ていたと、本気で思ったものだ。
だが身体は正直で、あの時のことを否応なしに教えてくる。
貧血と、神経伝達の鈍い下半身。
ダメージが完治するまでまだ時間はかかるというから、療養生活も当分続くだろう。
たびたび――というより、毎日来てくれるカイン、ロイ、ギルドマスター、その他大勢から話は聞いていた。
被害状況。
あの男の正体。
セシリアの過去。
あの戦いの後、どうなっているのか。
まだ戦いは終わっていない。
それは恐ろしく真剣な表情でカインが告げた言葉だ。
きっと誰もがそう思っているのだろう。
ギルド全体が殺気立ち、情報収集に奔走していたからだ。
魔神オウリーがどこに消えたのか。
そして奴に通用する武力が存在するのかどうか。
早急に掴まねばならないその二点が、全人類の存亡に直結している。
この空の下、どこかに奴はいる。
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