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「なにを見てるの?」
ふいに聞こえた声に、ヨハンは顔を向けた。
ギルドの北館から、使用人の女性が中庭に出てくる。
「空、かな。
ずっと医務室で缶詰だったから、息抜きに見たくなって」
「そっか。でも、風がそろそろ冷たい季節よ。
身体が冷えちゃうといけないから、入ろう?」
白と黒を基調とした使用人服姿で、セシリアが近づいてくる。
彼女は自分が座る車いすを押そうと、背後に回った。
「ねえ。セシリア」
「ん?」
ヨハンは視線を上げた。
蒼い空の中に、優しく微笑みながら覗き込む彼女の顔がある。
「俺、卒業したら絶対ギルドに入るよ。
強くなって、必ずセシリアをあいつから解放してみせる」
彼女はふと手首を見下ろした。
そこには白い包帯。
以前は知らなかったが、その包帯が何を隠しているかを、もうヨハンは知っている。
セシリアを縛る呪いの証だ。
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