Chapter 21

4/9
前へ
/1028ページ
次へ
「ありがとう。 じゃあ、勉強もちゃんと頑張らなきゃね。 知ってる? 入隊審査に、学力試験も入ってること」 「げっ」 知らなかったわけではないが、あまり深く考えないようにしてきたことだった。 だが、そろそろ無視するわけにもいかない。 本気で入隊を目指すなら。 セシリアは自分の反応に面白がって、小さな吐息で笑っている。 それが、心を暖かくした。 離れて行ってしまうと思った女性が、こうして傍で笑ってくれる。 何気ないことでも、ヨハンには幸せだった。 「ねえセシリア。俺がんばるから、また勉強教えてくれないかな」 「うん。いいよ」 「それとさ。魔法も教えてよ。 組み換え魔法なんて凄いこと言わないからさ」 「どうしようかな。 わたし、もう帝位返しちゃったし、勝手にそういうこと教えると怒られるかも」 「あ、そうか」 もうセシリアは風帝ではない。 ただの使用人で、普通の女の子だ。 もったいないとも思えるが、それがセシリアの望んだ生き方。 横から口を挟めるはずもない。
/1028ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13567人が本棚に入れています
本棚に追加