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「ありがとう。
じゃあ、勉強もちゃんと頑張らなきゃね。
知ってる? 入隊審査に、学力試験も入ってること」
「げっ」
知らなかったわけではないが、あまり深く考えないようにしてきたことだった。
だが、そろそろ無視するわけにもいかない。
本気で入隊を目指すなら。
セシリアは自分の反応に面白がって、小さな吐息で笑っている。
それが、心を暖かくした。
離れて行ってしまうと思った女性が、こうして傍で笑ってくれる。
何気ないことでも、ヨハンには幸せだった。
「ねえセシリア。俺がんばるから、また勉強教えてくれないかな」
「うん。いいよ」
「それとさ。魔法も教えてよ。
組み換え魔法なんて凄いこと言わないからさ」
「どうしようかな。
わたし、もう帝位返しちゃったし、勝手にそういうこと教えると怒られるかも」
「あ、そうか」
もうセシリアは風帝ではない。
ただの使用人で、普通の女の子だ。
もったいないとも思えるが、それがセシリアの望んだ生き方。
横から口を挟めるはずもない。
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