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中庭は穏やかな静けさに包まれていた。
建物の中にある張り詰めた喧噪も聞こえてこない。
でも。と、セシリアはつぶやいた。
「悪いこと教えるわけじゃないし、もしかしたら大丈夫なのかな」
「え? ほんと?」
「あとでマスターに訊いてみる。
もし了承もらえたら、なにかアドバイスしてあげれるかも」
「よっし! 行こう。今から訊きに行こう!」
車輪を回そうと手をかけるが、セシリアはそれを制止した。
背後で持ち手を掴んだらしく、ピクリとも動かない。
「気が早すぎるよヨハン。
ちゃんと傷が治って、学園に戻れてからじゃないとダメです」
「うっ……はい」
ぴしゃりと言い諭され、ヨハンは意気消沈して頷いた。
それが面白く見えたらしい。
セシリアが肩に手を置き、控えめに笑った。
たまらなく愛おしい声で。
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