Chapter 21

6/9
前へ
/1028ページ
次へ
(ちゃんと言おう) 決心というほどのことでもない。 本当に些細な勇気だ。 これまで言えずにいたことが馬鹿らしくなるくらいに。 ヨハンは肩に置かれた手を握った。 暖かい手。 彼女の身体が魔に侵されていることなど、微塵も感じられない。 「俺。セシリアのこと、ずっと前から好きだったんだ」 「……うん。ごめんね。言われる前からなんとなく分かってた。 でも、わたしこんなだし……貴方には相応しくないって思ってたの」 「関係ないよ。 俺はもう全部知ってる。 それでも、セシリアを想う気持ちは変わらない。 身体のことだって、絶対なんとかなる。 ギルドのみんなも調べてくれてるし、俺だって…… 魔物の世界に乗り込んででも、あれを倒して君を元に戻してみせる」 「お願い。危険なことはしないで。 わたし、ヨハンに何かあったら、もう前を向いて生きられない」 それが真に迫った声に聞こえて、ヨハンはまた上を見た。 セシリアのうるんだ瞳に、自分の顔が映り込む。
/1028ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13567人が本棚に入れています
本棚に追加