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(ちゃんと言おう)
決心というほどのことでもない。
本当に些細な勇気だ。
これまで言えずにいたことが馬鹿らしくなるくらいに。
ヨハンは肩に置かれた手を握った。
暖かい手。
彼女の身体が魔に侵されていることなど、微塵も感じられない。
「俺。セシリアのこと、ずっと前から好きだったんだ」
「……うん。ごめんね。言われる前からなんとなく分かってた。
でも、わたしこんなだし……貴方には相応しくないって思ってたの」
「関係ないよ。
俺はもう全部知ってる。
それでも、セシリアを想う気持ちは変わらない。
身体のことだって、絶対なんとかなる。
ギルドのみんなも調べてくれてるし、俺だって……
魔物の世界に乗り込んででも、あれを倒して君を元に戻してみせる」
「お願い。危険なことはしないで。
わたし、ヨハンに何かあったら、もう前を向いて生きられない」
それが真に迫った声に聞こえて、ヨハンはまた上を見た。
セシリアのうるんだ瞳に、自分の顔が映り込む。
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