Chapter 2

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「はっ!」 先ほどよりも鋭く息を吐いて、踏み込む。 剣を下段から、やや逆袈裟に近い横薙ぎで払った。 相手が人間であれば、脇腹を下から狙い打つ軌道だ。 今度はミシッと木が軋んだことに満足して、静かに剣を降ろす。 すでに南中しかかっているこの時刻は、じっとしていても汗をかく。 建物の中では冷却魔法がかけられている為、なにも無いこの屋外に姿を見せる物好きもいない。 せせらぎのように聞こえる人の声を漠然と耳にしながら、若木の枝に掛けておいたタオルを取った。 「ふう……」 (日課おわりっと) いつもの一人稽古に満足しつつ額の汗を拭いていると、ふと明確な物音に気付いた。 その音を辿って向けた視線の先には、女性が一人。 この中庭を挟む北館と南館のうち、北館のほう。 ずらりと並んでいる窓ガラスを、外側からせっせと水拭きしているようだった。
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