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見渡す限りの荒野で、強い風が砂塵を巻き上げる。
風が、薄い雲でよどんだ空を更に濁していくのを、目を細めて眺めていた。
それが完全に虚空に混じるのを見届けてから、改めて正面を見据える。
数十メートル先には、一体の魔物。
天を仰いで咆哮するそれは、ドラゴンの一種だった。
赤黒い鱗に覆われ、巨大な翼を広げる姿は神々しくも感じる。
「カイザードラゴン。
討伐目標を確認。
大きさからするに、三百歳ほどの成体か」
吐き出した呟きは、魔法で音声を変える必要もなく強風に掻き消された。
その風を作り出している主……カイザードラゴン。
魔物の中でも最強の種族であるドラゴンの、更に頂点に君臨する種類の一つだ。
他の生物と比べて圧倒的に生命力が高く、生半可な攻撃では傷一つつけることはできない。
目の前にいる個体は、体長が三十メートルを優に超す巨大さ。
まさにドラゴンの王とも呼ぶべき荘厳さを見せつけている。
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