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カイザードラゴンは目の前に立つ小さな存在に対して、明確な敵意を向けた。
また一つ叫びをあげると、雄大な翼を空打ちして飛び立とうとしている。
しなやかに躍動する黒い表皮が、陽射しを白く反射させていた。
ドラゴンの翼膜が大気を叩き突風を巻き起こす。
が、問題にもならなかった。
フードを目深に被った深緑のローブですら、僅かに揺れるだけ。
カイザードラゴンが低空飛行で迫ってくるのを眼前にしながら、両手をゆっくりと翳す。
内から溢れ出す魔力は快感すらもたらした。
「潰せ」
一言囁いた直後、迫り来るカイザードラゴンの翼がひしゃげて折れる。
硬直した巨躯はそのまま地を滑るように落下し、すぐ脇を抜けて遥か後方で止まった。
砂塵が巻きあがり視界を濁す。
が、発現した“風”はそれをすぐに掻き消した。
ドラゴンは見えぬ何かに押さえつけられたように微動だにせず、苦悶に喘いでいた。
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