Chapter 1

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カイザードラゴンは目の前に立つ小さな存在に対して、明確な敵意を向けた。 また一つ叫びをあげると、雄大な翼を空打ちして飛び立とうとしている。 しなやかに躍動する黒い表皮が、陽射しを白く反射させていた。 ドラゴンの翼膜が大気を叩き突風を巻き起こす。 が、問題にもならなかった。 フードを目深に被った深緑のローブですら、僅かに揺れるだけ。 カイザードラゴンが低空飛行で迫ってくるのを眼前にしながら、両手をゆっくりと翳す。 内から溢れ出す魔力は快感すらもたらした。 「潰せ」 一言囁いた直後、迫り来るカイザードラゴンの翼がひしゃげて折れる。 硬直した巨躯はそのまま地を滑るように落下し、すぐ脇を抜けて遥か後方で止まった。 砂塵が巻きあがり視界を濁す。 が、発現した“風”はそれをすぐに掻き消した。 ドラゴンは見えぬ何かに押さえつけられたように微動だにせず、苦悶に喘いでいた。
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