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ローブの下から右腕を持ち上げる。
行使している力の大きさを考えれば呆れるほど脆弱で白い腕だった。
手首には、黒いリストバンドがお決まりに巻かれている。
パチンッ!
指を鳴らすと、大気の流入が更に加速した。
それは、カイザードラゴンにとって苦痛を越えた安楽。
自然界ではまず起こりえない大気圧縮は、屈強なドラゴンの身体を小さく潰してゆく。
赤黒い表皮を舐めるように、電離した大気の光が奔り始めた。
そして……
耳をつんざく咆哮を轟かせたと同時、ドラゴンは生物では無くなった。
ついに耐え切れなくなった躯体が弾け、蒼血の豪雨が枯れた大地を打ち叩く。
血の雨の中、その者はただポツリと呟いた。
「魔は全て滅びればいい……」
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