25/26
前へ
/28ページ
次へ
「…うあー…」 もう一度僕を抱きしめ、先輩が僕の肩に顔を埋めて呻き始めた。 「…ごめん…ちゃんと言ってから、しようと思ってたのに…我慢、できなかった…」 恥ずかしそうにそう言うと、先輩がまた少し離れてじっと僕の目を見つめる。 「…楓。俺の…俺だけの、恋人に…なってくれますか?」 先輩の熱いまなざしが僕を捉えて離さない。 「…先輩」 「ん?」 「恋人って…1人しかなれないんだよ。」 「…うん?」 「いいの?」 「え?」 「僕で…いいの?」 不安になる。 こんな僕なんかが、先輩の恋人になんてなっていいの? 先輩なら、もっと他にいい人がいるはずなのに。 すると先輩がふわっと笑って、僕の頭を撫でた。 「てゆーか…楓じゃなきゃ、嫌なんですけど。…楓は?」 優しい声と顔に、不安が溶かされていくようだった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

637人が本棚に入れています
本棚に追加