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目を閉じて、最初に聞こえて来たのは甘いラブソングだった。 この曲は、先輩が好きだと言って貸してくれたCDに入っていた曲だ。 歌詞は綺麗で、メロディも良かったけれど、聞けば聞くほどに気持ちが冷めていくのを感じた。 誰かを愛して、愛されることなんて、僕には到底人事のようにしか思えない。 母さんはこんなだし、父さんも愛人がいるらしい。 体裁だけの家族。 みんなそれぞれが別のどこかに1番がいて、僕はそのどちらにも当て嵌まらない。 愛してる人に愛されるなんて、そんな奇跡みたいなことあるはずない。 僕には一生、縁のないものだ。 おもむろにmp3プレイヤーに手を伸ばし、曲の途中で次の曲へと飛ばした。 ヘッドフォンから流れてきたのは、この間ダウンロードしたばかりの洋楽の曲。 英語詞のそれは、意味なんてさっぱりわからなくて。 やっぱり僕にはそんな曲が合ってるな、なんて思った。
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