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「帰らないの?」
今度こそは明らかに僕に話している。
僕はこくんと頷いた。
「…帰り、ます。」
口ぶりからして多分先輩なので、一応敬語。
そう言った手前、僕は椅子から立ち上がり帰り支度を始めた。
「ひとり?こんな時間まで何してたの?」
未だ教室から去る様子のない先輩は、重ねて質問をなげかけてきた。
「……家に帰れないから。」
僕がそう言うと、先輩はきょとんとした顔で僕を見つめていた。
適当に流せば良かった。
先輩の気さくな雰囲気に乗せられて、いらないことを言ってしまったと少し後悔した。
「……では。」
先輩の横をすり抜けて教室を出ようとした時。
突然、腕を掴まれた。
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