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驚いて先輩を見上げれば、オレンジ色に色づいた先輩の顔がすぐ近くにあった。
「……一緒に帰らない?」
真剣だった顔はすぐに笑顔になって、その顔と腕の力に僕は少なからず動揺した。
「あは、ノーリアクション。」
しかし僕の動揺は顔や態度に表れることはなく、先輩はスッと体勢を立て直し顔と手が離れた。
「まあ、今初めて会った人にこんなこと言われたら不審だよな、そりゃ。」
笑いながら頭を掻く先輩を見上げながら、手のぬくもりが残る腕にそっと触れる。
「でもなんか、君に興味湧いちゃった。
……行こ?」
そう言って手を差し出される。
慣れた口ぶり。
軽いノリ。
きっと誰にでも言っているだろうことくらいわかる。
それでも僕はその暖かい手に引き寄せられるように、
自然とその手をとっていた。
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