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帰り道は色んな事を話した。
と言っても、ほぼ先輩が喋って、僕は質問に答える程度だけど。
この人は井崎つばさ(いざきつばさ)というらしい。
話も上手いし、多めのスキンシップも自然で嫌みがない。
きっと僕と違って友達がいっぱいいるに違いないと思った。
僕は昔から人付き合いが苦手で、友達と呼べる人なんて今も昔もいなかった。
だから、こんな風に僕と関わろうとしてくる人は珍しくて、僕が言うのもなんだけどちょっと変な人だと思った。
どうせ気まぐれで、たまたま会った僕と帰ろうなんて思ったに違いない。
そんな僕の予測は裏切られることになる。
「連絡先、交換しようよ。」
帰り際に言われた言葉に、僕は無表情のまま驚いた。
連絡先を交換する、イコールこれからもなんらかの連絡をとる可能性があるってことだ。
生憎、僕にとって携帯なんて非常用でしかなく、もちろんメールなんてものは使いこなせない。
そのことを伝えると、つばさ先輩はひとしきり笑った後、
「じゃあ楓と話したい時は直接会いに行くことにする。」
そう言って携帯をポケットにしまった。
楓と呼ぶ声に、なぜだか少し胸がざわついたのを覚えてる。
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