2464人が本棚に入れています
本棚に追加
神崎瞬は気が進まない中、のろのろとした動作で重たい扉を引き開ける。
その中は狭い個室だった。
床一面には赤い豪華な絨毯が敷かれているが、扉を開けたそのすぐ先に木で造られた机と椅子が置いてあり、そこに一人の中年男が座っていた。
男は神崎に気付くと、書類から顔を上げて柔和な笑みを浮かべる。
「なんの用ですか。コモンさん」
コモン=ネット。神崎が所属する軍隊――アンブランテの最高責任者だ。
年は三十代前半。短い黒髪のオールバッグで、物腰柔らかい男である。
コモンは細い目を更に細めて笑みを作りながら、一言。
「学校に行け」
「は?」
「だから、学校に行けよ」
「理由が分かりませんが」
「理由は後で炎帝から説明させるから、今はとにかく出発の準備をしてくれ。三日後に出発だからな」
「いや、でも……」
少年は言葉の意味が分からず、なんとか理由を説明してもらおうと食い下がったのだが。
「命令。早く準備しろ、ノロマ」
の一言で、強制的に部屋から追い出されてしまった。
あの人は一体なにがしたいのだろうか。そんな事を考えながらさっき歩いたばっかの廊下を引き返す少年。
「まっ、大変な任務じゃなくて良かった……かな?」
何事もポジティブに考えればいいのだ、という現実逃避的な思考に到達した。
最初のコメントを投稿しよう!