プロローグ

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血しぶきが舞う。 「グッ!?」 左肩を押さえて血を止めようとしている少年は、地面に膝を着けて荒い息をはいていた。 「はーっははは!最強の雷帝さんとやらは、この程度なのかい!?」 漆黒のローブに身を包んでいる少年の前には、金髪ショートウルフの少年が立っていた。 目つきが鋭く、口元を不気味に歪めながらひざまづくような格好の少年を見下す。 対して、左肩を負傷し黒いローブの隙間から赤い液体が漏れている少年――神崎 瞬(カンザキ シュン)はいつもは優しい瞳に、憤怒の炎を浮かべて目の前の化け物を見る。 昔。この二人は仲が良かった。 神崎の目の前に立っている少年は、右手に持っていた柄のない、二メートル以上もある刀を手負いの少年の鼻先に突きつける。 「よぉ。これで全力なのかよ?だとしたら、つまんねーなぁ」 あまりにも実力に差がありすぎた。文字通り手も足も出ず、神崎はやられてしまったのだ。 「もういいや。お前はここで死んどけ」 長刀を頭上に振り上げ、少年は不気味に微笑む。 神崎は死を覚悟する。 大体、自分は落ちこぼれなのだ。 なのに、なんでこんな事になっていたのか。 まるで走馬灯のように、始まりの記憶が蘇ってくる。
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