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そのままジリジリと後退していく神崎瞬。
すでに、魔物との距離は三十メートルくらい離れていた。
が、しかし。こんな距離なんて気休めにもならない。
あいつらの運動能力は異常だ。こんなちっぽけな距離なんて、一秒か二秒あれば埋められるだろう。
刀を持つ手に汗が滲んできた。これからどうしよう。どう逃げよう。そんな考えばかりが頭の中を駆け巡る。
実際、どの程度距離を開ければ逃げ切れるのだろうか。
数百メートルか。数千メートルか。
それすらも見当がつかない。
呼吸が荒くなってくる。足がぶるぶると震えてきた。
どうしようもなく恐いのだ。
こいつを離した直後に、あいつらに殺される。
それ以外の道が思い浮かばない。
途中で石で転びそうになりながらも、神崎はなおも退がり続ける。
後ろを見てなにもない事を確認している少年に、神の悪戯がやってきた。
ビュオッ!!という突風が後方から吹いてきたのだ。
「うわぁっ!」
そのあまりの風圧に、神崎は前に転ぶ。それと同時に、ザシュッというなにかを切る音。
顔に生暖かいものが吹きかかってくる。
横を恐る恐る確認してみると……。
「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
デーモンの首から上が、離れた位置にあった。
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