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「本日、日本政府は世界政府の意向に従い、この件について速急に対応する事を正式に決定しました」
いつもと変わらぬ口ぶりで、感情を表に出さない小奇麗な若い女性アナウンサーがつらつらと文面を読み上げている。職業病というやつだろうか、この件に関してさえ感情を露わにしないとは流石といえる。不味いコーヒーを啜りながら考える、この人ははたしてどちらを選ぶのだろうか。
「――――て、全国民を対象に意思を尋ねる―― 、――――あなたの――が、この星――――」
もはや贔屓にしていたアナウンサーの言葉など聞こえていなかった。全てのピントは目の前の、日本政府から送られてきた文書に注がれていたからだ。
『あなたは、この星の人類の半分が確実に生き残る未来を選択しますか。その場合は○を記入して下さい』
『あなたは、この星の人類が全て生き残る、もしくは全てが滅びる未来を選択しますか。その場合は×を記入して下さい』
たまたま手元にあったサイコロをふった。3の目が出た。――ヤレヤレ、素数か。割り切れない数字は嫌いなんだがなぁ。
コーヒーを啜る。不味いなぁ。
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