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「ねぇ、爺様。どーして牛や鶏、イルカや鯨を殺してもいいのに人間は殺しちゃいけないの?」  祖父にそう尋ねた事があった。あの頃の私は、テレビで見た事に対して童心ながらに疑問に思ったのだろう。 「それはな、坊」祖父はよく私の事を坊と言ったものだった。 「人間が牛や鶏、イルカや鯨等を殺すのは全て生きるためなんだ。殺して、食べて、生きるためなんだよ。坊にも宿るこの命を持続させるのは、すごく大変な事なんだ。他から命を貰わないと、いつか命は止まってしまうからね。人間を殺して悪いのは、その動機が食べるためじゃないからだよ。わかるかい? 坊」  そう言って祖父は私の髪をくしゃくしゃにした。兄弟の仲で私だけ癖毛なのは祖父に可愛がられていたからだと今でも信じている。  ――どうしてこんな昔の事を思い出してしまったんだろう。あぁ、そうだ。きっと、この毛の無い丸頭が似ていたんだ。それに、気のせいか、血の滴るこの臓物の味もどことなく似ているかもしれない。 「生きるために食べるのなら悪くないんだよね、爺様」
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