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  肩まで伸びた髪をバスタオルで乱暴に拭きながら、麻子は部屋の明かりをつけた。 冷蔵庫から飲みかけのミネラルウォーターのボトルを取り出し、キャップを開けてそのまま口をつける。 喉を鳴らして冷えた水を飲み干すと、部屋の中央に据えたソファに腰を下ろした。 サイドテーブルに空のボトルを置いて、代わりに受話器を手にする。   四年前から今日まで、何度となく押してきた番号を指で辿った。 何も考えなくても、もう体が覚えてしまっている十一桁の数字。 聞き慣れたプッシュ音が響いた。 この瞬間は、いつも無意識に息を止めてしまう。  
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