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「お掛けになった電話番号は…」
麻子は受話器を置いた。
詰めていた息が唇から零れ落ちる。
こうして受話器を戻すたび、失望が胸に溜まっていく。
始めのうちに残っていた希望はどんどん磨り減って、それでも受話器を手に取るのはもう惰性だ。
気がつけば窓の向こうを探してしまうのと同じ、ただの習慣に過ぎない。
四年という月日は、便りのない相手をただ待つには長過ぎた。
必死で探していたのは最初の一、二年で、今はもう半ば諦めてしまっている。
習慣でも惰性でも、やめてしまわないのは忘れるのが怖ろしいからだ。
やめてしまえば、本当にあの人が存在していたのかさえ有耶無耶になってしまう気がした。
せめて死んでいるかだけでも分かれば、と麻子は思う。
死んでいるのなら、それがはっきりと分かるのなら、少しは諦めがつくだろうに。
こんなことを考えるのは、一度や二度のことではない。
考えるだけ無駄と分かっていても、考えずにいられなかった。
願わずにはいられなかった。
どういう形であれ、決着がついてくれればいい。
それが彼の死という形でも構わない、と。
何でもいい、きっかけが欲しかった。
麻子はゆっくりとソファの上に体を倒し、瞼をきつく閉じた。
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