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  空が赤く染まる頃、高崎智人は商店街を歩いていた。 濃い紺のジーンズに灰色のパーカーを羽織り、黒いリュックを背負っている。 端正な顔立ちをしているが、その表情は暗い。 高崎は帰路につく人々の合間を早足で歩いていく。 足元のスニーカーと橙に染まったアスファルトだけを瞳に映して、ひたすら足を進めた。 温かな食べ物の匂いや楽しげな笑い声を拒絶するように、体を丸め、俯きながら。   当て所もなく歩き続けて、気がつけば日は落ち、辺りはすっかり闇に包まれていた。 商店街の先にある公園のベンチに腰を下ろし、高崎は夜空を仰いだ。 体の節々が軋むような音を立てる。 歩き続けている間は感じなかった疲労が途端に全身を襲った。 指の先まで倦怠感が広がり、鉛のように体が重い。 湿気を含んだ夜気が頬を撫ぜた。  
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