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「さっきも見たと思うけど俺は妖だよ。九尾の狐らしいね。」
『らしいって?』
少し赤くなった額をさすりながら語尾のおかしさにみのるは気付いた。
「俺、昔の記憶が無いんだ。傷だらけだった俺は鈴に拾われた。それからずっとここでお世話になってる。妖が妖霊媒師の家系でお世話になるってのも変な話しだけどね。」
貞滋の表情はにこにこと変わらないが心なしか声に寂しさが混ざっているようにも思えた。
「へぇ~。鈴音がねぇ。」
楓は少し信じられないと言う目で鈴音を見る。
「なっ何よ!あの時は小さかったし猫と勘違いしたのよ!」
「鈴音。顔を赤くしてたら説得力がないぞ。」
「~っ!」
明の一言によって更に顔を赤くする。
「だから俺には妖最強(凶)の種族と言われても実感がないんだ。
九尾は仲間意識が強く、個々が持つように力も他の妖に比べて高い。そして気に入らないものは全て殺す。傍若無人な奴らっていうのは資料や出会った妖達に聞いた話しなんだ。だから俺にどうして生き残りがいるって聞かれてもわからないし、俺自身がわかってない。知りたいんだ。」
貞滋は冷めきってしまったお茶を啜る。
「貞滋は血の繋がりがなくても、妖でも大切な息子だよ。」
明のさりげない優しさに笑って答えた。
『しょう(そう)言えば、なんで二人は契約してるの?』
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