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―この世界で昔から一番妖[アヤカシ]が出る国″幻境国″[ゲンキョウコク]。
この国の人々は妖達と平和に暮らしていた。
けれどいつしか人々は妖を恐れるようになった。
そして、ついに妖の姿を見ることができなくなってしまった。
姿を見ることが出来るのは特別な力を持つ者だけと言われている。
その者達を人々は―。
「なんて馬鹿らしいのかしら。」
とある学校の屋上。
今は授業中で屋上には二人しかいない。
そのうちの一人、小柄な茶髪の少女は読んでいた本を乱暴に閉じて呟く。
「見えなくなったのは時代のせい。しかたのないことみたいに言っちゃってさぁ。そう思わない?貞滋[テイジ]。」
彼の名は柊貞滋[ヒイラギテイジ]。金髪碧眼おまけに長身。モテる容姿だが本人にその自覚はない。ちなみに文武共に成績優秀である。
「確かに時代のせいってのはあるかもしれないよ。でも一番の原因は人間かな。人が妖達を恐れ、遠ざけた。だから「だ-かーら-さぼるんじゃないっての!!」」
貞滋の話は突如現れた第三者によって遮られた。
「なんで毎回私が行かされるの。あんたたち二人もいい加減飽きたでしょ?このやりとりに。」
「飽きるも何もあの数学の教師だけじゃん。さがしに来させるのは。」
「そうゆう問題じゃないんだって~。鈴音[リンネ]。」
小柄な茶髪の少女は仲達鈴音[ナカダチリンネ]。大きな二重の眼が幼さを引き立たせている。かなり口が悪いが見た目は美少女である。
「あんたは貞滋みたいに頭良くないんだからね。鈴音。」
「世の中頭とルックスだけじゃ生きていけないのよ。マーヤ。」
第三者の少女通称マーヤ。本名春風麻耶[ハルカゼマヤ]二人のクラスメイトで幼なじみでもある。
「なんで言えば倍で返ってくんの!?」
麻耶はその場に座り込んだ。
「私に敵うとでもおもってるの?」
貞滋は思う。
鈴[リン]に口で敵うのは鈴のお母さんだけだよ。…
これを口はにしようものなら倍、いや3倍くらいになって返ってくるので口にはしない。
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