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貞滋の横では鈴音と麻耶が不毛な言い合いを続けていた。
この穏やかな時間がずっと続けばいいのに…
ある一点を見つめながら貞滋は思う。
だが現実は上手くはいかないものだと実感する。
「貞滋…。」
さっきまでうるさいくらいにしていた不毛な言い争いがいつのまにか止まっていた。
「うん。¨荒鬼¨(コウキ)だよ。」
二人は目を合わすと同時にかけだした。
「もう、鈴音ってばー!!」
屋上には少し不安げな顔をした麻耶だけが残ったのをふたりは心苦しく思っていた。
「マーヤには悪いことしてしまったね。」
「まぁね。
あの子が一番近くで私たちを見てるもの。いつでも不安なんでしょうね。」
幼馴染なだけにこれまでも二人の傷つく姿を嫌というほど見てきた麻耶。
「だからこそ俺たちは無事に帰らなきゃね。」
「当たり前よ。怪我でもしてみなさい。マーヤに治療されてたら痛い目みるわよ。」
消毒液ぶっかけられるは、小言言われるは、大怪我でもしたら泣かれるかもしれない。
過去にあった様々なことを思い出して貞滋はも身震いした。
「それが嫌だったらはやく終わらせてサボった小言でも聞き流しましょ。」
鈴音は走る早さをあげる。
「聞き流すのもひどいんじゃ・・・。」
貞滋もまた速さを上げて鈴音を追いかけるのであった。
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