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神守の森は山の奥へと入るにつれ傾斜は急になり足場も悪くなる。
そんなところを子供が走れる(登れる)だろうか。
答えは聞くまでもないだろう。
そんな道なき道を黒猫はひたすら進む。
運悪くまた子供の姿に戻ってしまったが…。
(まだか。まだなのか。)
何が黒猫をそうさせるのか。
何の目的があって進むのか。
(あの時お主は申したであろう。)
《この先君のその力は君自身を殺してしまうよ。》
まだ幼き時。その力故生まれて間もなく独りになった。
何もわからず独りで生きていくには幼すぎた。
《困ったら僕をお探し。君は僕の友達だ。まだまだ先になるとは思うけど力を貸そう。》
子供のあどけない笑顔。
その時は何を言っているのか理解できなかった。
(じゃが今ならわかる。)
《あはっ。なんでって顔してる。ふふっ。僕はね春の精霊なんだ。》
(なぜわしに声をかけたのか。)
《一つ呪いをかけてあげる。》
子供が悪戯を思いついた顔をしていた。
《その力が抑え切れなくなったら僕を思い出すように。そしてこの場所で僕の名をお呼び。そうしたら僕は応えよう。》
なぜあの時寂しいそうな目をしたのか。
(すまぬ。お主にすがるしかのうなってしもうた。)
だから名を呼ばせておくれ。
《僕の名はねー》
黒猫は力の限り叫ぶ。
「緑(リョク)ー!!」
その瞬間結界が割れた。
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