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「君達は一体…」
「ちょっとオッサン。あんた自分がどこで何したかわかってんの!?」
少し離れたところに倒れている猿の化け物を睨みつけながら男にくってかかる。
荒鬼が男に襲い掛かるギリギリのところで貞滋が間に入り荒鬼を蹴り飛ばしたのだ。
「鈴。あれ…。」
鈴音たちから少し離れたところには一匹の猿の妖が頭から血を流して倒れていた。
「ねぇ、オッサン。あの化け物なんて言うか知ってる?
“荒れ”狂う“鬼”と書いて“荒鬼(コウキ)”って言うの。
妖だけでなく普通の動物でも深い悲しみや恨み憎しみを持つとあんな風に変わっちゃうのよ。
あんな姿にしてるのは私たち人間なのよ!それなのに助けてと泣きわめいて情けないと思わないの!
本当に助けを求めているのはあの荒鬼なのよ。」
「あの荒鬼…苦しい、悲しいって言ってる。」
貞滋が荒鬼の言ってることを通訳する。
「何も悪いことしてないのにどうして殺されなくちゃいけない。みんな目の前で居なくなった。もう嫌だ。許さない。憎い。同じ痛みを知ればいい…。」
鈴音は一瞬悲しそうな顔をする。
「オッサンには然るべき罰をうけてもらうからね。
今はそこでおとなしく腰ぬかしてな。」
そして一歩ずつ荒鬼へと近づいていく。
「ごめんなさいね。私達に出来るのはあなたをみんなと同じところに導くことしか出来ないの。」
『ギャァ―。』
まるで人を拒絶するかのように荒鬼は一歩後退り鈴音へと突進して来た。
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