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「忘却の彼方へと帰依するものよ。地獄の業火にて今苦しみから解き放たん。我の声聞こえたなら応えよ。」
今まで黙っていた鈴音の声が心に響くように聞こえる。
その声に反応するかのように鈴音の背後の空間が歪みはじめた。
貞滋はちらりと鈴音を見る。
その一瞬のすきに荒鬼は貞滋へと襲い掛かるがいとも簡単に返り討ちにされてしまう。
荒鬼を蹴り飛ばした反動を生かして頭上の木へと移る。
「いでよ“地獄の番犬『業戌(ゴウイ)』”」
貞滋が木の枝へと移った瞬間鈴音の背後、歪んでいた空間から炎を纏った黒い塊が飛び出した。
その塊は犬の形を成し荒鬼へと突っ込んでいく。
荒鬼は受け止めようとするが触れた瞬間に全身を炎に包まれた。
『ギヤアァぁ!!』
苦しむ間もなくあっというまに燃えつきた。
炎が消えたあとには小さな光の粒がいくつか残り、その粒もやがて空へと消えていった。
「ありがとう。業威。」
自分に寄り添っていた業威の頭を撫でると満足したかのように業威は在るべき場所へと帰って行った。
同時にスーツを着た男女数人が突然その場に姿を現した。
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