名前

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少年が意識を取り戻し、目を開けたた時、そこはさっきまでの場所とは異なっていた。 装飾のない、単純な造りの二段ベッドの下の方に自分は横たわっている。シーツも布団も、白一色で新品同様に汚れがない。 「夢……だったのかな」 そう呟いてみて、少年はああ、そんな声なんだと思った。自分の声を聞いた事ですら、初体験な気がしている。 少年は、なぜここで寝ているのかが分からなかった。さっきまで、奇妙な空が広がる空間にいたはずだ。それが夢だとしたら、その夢を見る前の自分は何をしていたのか…… 少年は上半身を起こして、自分がいる場所を確認する。 広さは自分が6人ほど寝られそうなくらいであった。壁の向こう側には本棚があり、その左隣には洗面台、右隣には中身のあるダンボール箱らしきものが、いくつか転がっている。 自分が寝ていた場所なのに、少年にとってはここは、記憶にない場所であった。なぜここにいたのかが、分からない。 寝ていても何も思いつかないだろう。そう考えて少年はひとまず起き出し、欠伸をしながら洗面台についている、大きな鏡の前に立ってみた。
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