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「よお、もう起きたか?」
そんな声と共に、部屋のドアを開けたのは、眩しいばかりの笑みを浮かべた男子だった。
髪の毛を整えているようだが、寝癖のように凹んだ、少し短めの茶髪。そして丸めの顔に光る黒い目は、興味と関心から輝いている。
しかし、中にいる少年を見るなり目を見開き、来ている灰色のブレザーのポケットに両手を突っ込み、拍子抜けしたように口をすぼめた。
「あー。部屋間違えちゃったかな……一つ向こうだったか」
「あ、あの……」
小さく言い訳がましい事を言う男子に、少年が声をかけると、彼はああと生返事をした。
「ここは、どこですか?」
少年の質問に、彼は分からなさそうに首を傾げていたが、すぐに頷くと
「お前がいるんだから、ここはお前の部屋じゃないかな。そうだろ?」
もっともらしい答えだと少年が頷くと、男子は呆れたように頭をかかえ、首を大げさに振ってみせた。
「あーまさかあれか。お前が今日から来た人?」
少年が肯定を示すなり、男子はがっかりしたような、ちょっと怒っているような微妙な表情で、少年の手を掴むなりぶんぶん振り回す。
「あーそうか。僕は春明っていう、君のクラスメイトだ。よろしく頼むよ。さてと、なんか拍子抜けしたから、帰るな。それじゃ」
そして手を離すや否や、男子は溜息と共に出ていった。
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