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「あー。教室まで案内して欲しい、だって?」
制服の灰色ブレザーにズボン、青いネクタイに着替えた少年は、まだ廊下をうろうろしていた春明を見つけ、教室までの道を訪ねていた。
「うん。君も行くだろうから」
「あー……」
至極当たり前の事を言ったのに、春明はあらぬ方を見て舌をちらほら出しながら、答えかねているようだ。
そして、少年が首を傾げると、春明はちらりと少年を見てから、大きく頭を下げる。
「ごめん、授業はサボる!」
言うや否や、春明は自由目掛けて死にもの狂いで脱兎の如く駆け出した。その姿は廊下の角を曲がり、すぐに見えなくなる。
「はぁ」
頼みの綱がぶち切れたように、少年は廊下にただ一人、呆然と立ち尽くしていた。
ここが『学校』のどこであるのかは分からないし、教室がどこにあるのかも知るはずがない彼にとって、とるべき手段はただ一つ。
仕方なく、少年は壁に背中を預けて、他の男子が来るのを待つ事にした。
程なく、近くのドアから少年と同じ服の男子が二人出てくる。少年は距離を置きながら、その二人の後をつけた。
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