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「き、聞いてください、隊長。私は嫌だと断っているんですが、この人が……」
「あら~、アタシ好みの可愛い坊やねぇん。どう? 今夜、アタ――」
「シェリア、状況を説明してくれ。頼む」
身の危険を感じた俺は、その男を視界に入れないようにシェリアの顔だけをジッと見る。
「そ、それがですね、この方が突然、『アナタ、モデルにならない!?』と声をかけてきて……」
モデルかぁ……。確かに、シェリアなら美人だし、スタイルいいし、大人っぽいし、恥ずかしがってる姿はバカみたいに可愛いし、そんじょそこらのモデルには負けないだろうな。
「でも、どうしてシェリアなんだ?」
「それは、彼女がイメージにピッタリだからよぉ~」
「話はだいたい分かったよ!!」
なんの? と聞く前に、店内にも関わらず、ネーナが大きな声で勢いよく飛び出してきた。
「この賢く鋭い美人なお姉さんであるあたしが推測するに――」
賢くて鋭いのかは知らないが、美人なお姉さんの部分は激しく問いただしたいな。
「店長は、6月が近づいているからウエディングドレスを着るモデルさんが欲しいんでしょ!!」
「あぁ~ら、正解よ、ネーナちゃん」
「フッフッフ、この才色兼備、文武両道、品行方正を地で行くお姉さんのあたしに、分からない事は無いのだよ!!」
どうも2人は知り合いらしく、慣れた様子でネーナは話しかけている。
しかも、さっきよりも言ってる事がデカくなってるし……。
「まあ、ネーナちゃんの知り合いなら話が早いわね。ねぇ~ん、一度でいいからドレスを着てくれないかしら~ん?」
「で、ですから……」
「ね! 一度でいいから!!」
「あの、その……」
どうもこういう事は強く断れないのか、シェリアが助けを求めるようにチラチラとこっちを見てくる。
どうしていいか分からず、ユノアに視線を向けると、さっきと変わらない様子でジッと店長を見ていた。
「ならシェリア、こうしない?」
何かを思いついたような意地悪な笑みを浮かべるネーナを、俺たちは不思議そうに見る。
そんな中、なぜか俺は、ロクな事にならないんだろうなぁ……と感じた。
「ユー君をお婿さんにしてあげようじゃないか!!」
「なっ!?」
シェリアがあまりに予想外だったのか、顔を真っ赤にして驚きの声を上げた。
やっぱり、ロクな事じゃなかったな……。
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