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「ほい。では~誓いのキスを」
雰囲気を出すために神父様を呼んだらしいが、本当にめんどくさそうにしている。
ムードも何もあったもんじゃないが、なぜかネーナは目を輝かせ、ユノアは興味深そうにこっちを見ている。
「あー……シェリア」
「な、何でしょうか、隊長」
身長の差で少しだけ見下ろす形で見るシェリアの顔は、緊張で強張っているのが丸わかりだ。
「とりあえず、取り直しなんてなったらたまんないから、リラックスしてもらえるか?」
「わ、分かりました」
余計に気負わせてしまったらしく、さらに表情が強張ってしまった。
「シェリア」
名前を呼んで頬に手を添えると、シェリアの体がビクッと震えた。
俺の予想以上に緊張しているらしく、体が小刻みに小さく震えているのが感じる。
瞳を潤ませ、桜色の柔らかそうな唇を震わせるのを見ていると、なぜか微笑ましい気持ちになってくる。
「いつも通りでいい。変に気負うな。ちゃんと直前で止めるから、俺を信じてくれ」
添えた方の手の親指で頬をなぞると、落ち着いたのか表情が柔らかくなって震えが止まった。
「……分かりました。私は、隊長を信じます」
「ああ。ありがとう」
俺はシェリアの顔に段々と近づけていく。
こんなに美人なシェリアを相手にしてるだけに、一瞬でも気を抜けば唇に吸い込まれそうだ。
ある程度、近づいたところで、添えた手で陰を作るようにして寸止めで止める。
場所によるが、これでキスをしているように見えるはずだ。大丈夫。多分、大丈夫だ。
「はーい! 2人ともいいわよ~!!」
「っはあ!!」
店長の声を合図に、俺はシェリアから急いで離れる。
予想以上にシェリアの唇は魅力的で、もう少し遅かったら本当にキスしていたかもしれない。
「2人ともありがとうね~。おかげでいい宣伝になるわ~。ふふ、それじゃあ2人は着替えてらっしゃい」
「……分かりました」
俺は着替えるために、さっき着替えた部屋に向かう。
ふと、シェリアに目を向けると、胸に手を当てて息を整えていた。
これは、移動するのはもう少しかかるかな。
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