しがない理事長の1日

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――AM8:50――  のどかな朝を過ごした後、ウルは移動中の車内でアンナから今日のスケジュールを聞き、理事長室で書類整理に勤しむ。  内容は、都市内の各施設からの改善の要望。他都市との貿易における物などが大半を占め、残りが都市内の資産などについてである。  学園内や警察内の事などは、ラミアとスエードが大方済ませてしまうので、細かい事以外は報告書に目を通す程度だ。 「理事長、紅茶です」  ウルが1時間以上、机と向き合っていたために、疲労した目を押さえてイスに背を預けると、ユラユラと湯気を立ち上らせるティーカップが机の上に置かれた。 「と、悪いな」 「いえ、これが私の仕事ですので」  ウルは淡々と喋るアンナを横目でチラッと見ながら、カップに口をつけて紅茶を流し込む。 「ん? アンナ、紅茶の味が変わってるぞ」  紅茶の味が変わった事にウルが気づいたのが嬉しかったらしく、アンナは少しだけ頬を緩ませて得意げに話す。 「つい先日、いつも使っている茶葉が切れましたので、前々から気になっていた茶葉を使ってみました。お味の方はいかがでしょう?」 「ああ、美味いな。俺は……前よりも今日のヤツの方が好きだな」 「では、次回からは淹れ方にも工夫を凝らしてみます。楽しみにしておいて下さい」  誇らしげに笑みを浮かべるアンナを横目で見ながらウルは、普段からそうしていれば引く手数多だろうに……と、気づかれないように同情を込めた視線を送る。 「さてと、一息ついた事だし、そろそろ再開するか」  ウルはカップを机の上に置くと、首をコキコキと鳴らした後、背伸びをしてしっかりと体の筋肉をほぐす。 「ああ、アンナはもう少し休憩してていいぞ」 「分かりました。では、頑張ってください」  アンナは頭を下げると、カップを片付けに理事長室を出て行った。 「うし! もういっちょ頑張るか!!」  ウルは頬を叩いて気合いを入れると、再び書類と向き合って格闘を始めた。
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