心霊体験者

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
私は子供の頃から霊感が人一倍強いらしく、 数え切れないぐらいの心霊体験がある。 金縛りなどはほとんど毎日で、 ひどい時には一週間くらい解けなかったこともある。 よく、金縛りにあって、 目を開けたら霊が体の上に乗っていたなどと、 自慢げに話してる心霊体験者がいるが、 私に言わせればそんなの大したことではないのだ。 言っておくが、 心霊体験をしたからって、 偉いわけじゃないのだ。 私などは、ある時、 金縛りにあって目を開けたら、体の上に、 二百人くらいの白髪の老婆が乗っかかっていたこともある。 私は別に驚きもしないし、 人に自慢するつもりでもない。 「ああ、またか」 ぐらいなもので、 心霊体験のうちにも入れるのも恥ずかしいぐらいの、 当たり前の日常なのだ。 本当の心霊体験などはそんなものである。 小学生の時の心霊体験は、 というより、 私のクラスは私以外、 全員が心霊だった。 私の隣の席は コックリさんだったし、 後ろはトイレの花子さん。 そして、 担任は、口裂け女だった。 コックリさんは、 授業で指されて、 しょっちゅう、 「はい」 と 「いいえ」 を間違えて、 口裂け女に怒られていたし、 花子さんは、授業中、 トイレに行きたいと言い出せなくて、 オシッコを漏らしてしまったこともあった。 「トイレの花子」 としてみては、アレは最大の汚点であろう。 社会人になってからは、 友達五~六人のグループで、 よく、ツーリングやキャンプにいったものだが、 私が行けば、 「いろは坂」 などでは必ず、 カーブを曲がるたびにヘルメットをかぶった、 生首がゴロゴロと転がってきたし、 そいつらは皆、目を見開いて、 「俺どうなったの?」 とか 「俺、死んじゃったの?」 などど喋りまくったもんだ。 山中湖なんかに行けば、 湖面から突き出している手は、 一本なんてモンじゃない。 もう、ほとんど水面が見えないほど、 湖じゅうが手で埋まる。 ボートなんか乗ろうもんなら、 手から手へと運ばれる状態だ。 結婚してからは、 家に帰れば、 実は家にいるのは私一人だ。 見えるはずのない嫁さんと会話し、 聞こえるはずのない子供達の笑い声。 誰も居るはずのない家に毎日帰り、 食べるはずのない晩御飯を食べているのだ。 これで皆さんにも少しは、 心霊体験者の気持ちが解ってもらえただろうか。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!