第一章

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 木が鬱蒼と茂り光があまり射し込まない森の中を、一人の青年が歩いていた。  青年の格好は、全身を茶色いコートを着ておりその下にコートと同じ色をしたシンプルな長袖の服を着ている。 下半身も上半身と同じく、茶色をした無地のズボンを穿いて、見事に茶色で埋め尽くされている。 茶色尽くしの服装には土や草がついていて少し汚いが、この薄暗い森の中ではそれが旅人を思わせる。  そんな旅人に似た青年の容姿は、きめ細やかな肌に肩甲骨辺りまである絹糸の様な、細く綺麗に輝く銀色の髪。 少しつり目の整えられた眉にスッとした鼻、水さえ弾きそうな綺麗な唇は、この場では不釣り合いなほど美しい。  しかし、その青年には普通の人とは少し違う所があった。  一つは心の中を見透かされそうな程澄んだ色をした金の瞳。  二つ目は、見ているだけで深い漆黒に飲み込まれそうな感覚を覚える右腕。 その右腕には灰色で、薄く呪文の様な模様が浮かんでいる。  三つ目は、木々の間からたまに覗く光が当たると、仄かに輝く様に見える左腕。 それがこの青年の普通とは少し違う所である。そんな異質な青年がこの森を一人で歩いているのは、只単に青年がこの森に住んでいるからであり、特別なものはない。 しかし、この森には危険な魔物が多く生息し、人が来ることは多くなく、誰かがもしこの森に訪れるとしたら、主に任務か学園で使う薬草や毒草を取りに来るくらいである。  何故この異質な青年がこの様な危険な森に住んでいるのかは想像通り、青年の異質な姿に恐れ、その姿を見た人々は化け物と呼び始めた。今や青年の事をその町では知らない人はいない程。 腕や目を隠せば普通の人とは変わらない。それでも、少し姿が違うだけで人間はそれを違う生き物の様に、平然と傷付ける。  この姿のせいで行くところもなく、仕方なしにこの森に戻ってきた。元々物心付いた頃にはこの森に青年は住んでいた。それもあり森の中が今では庭の様になっている。
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