西村絵里

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──帰り道。 街灯に照らされ伸びた二人の影は、自転車を押している。影のなかでこそ彼女も背が高く見えるが、実際は俺の肩より下に頭がある。 「斉藤さん何歳ですか?」 少し距離を置いて歩く彼女が尋ねてきた。 「俺は21歳だよ。西村さんは高校生?」 「む~18歳の大学生です」 ほっぺたを膨らまし力強く睨んできたが、その目には特に怒りの色はなかった。どちらかと言えば悲しそうな目に見える。 大きな目や豊かな表情、少し高いが聞き取りやすい声などは、15か16歳ぐらいにしか見えないほど若さにあふれている。
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