LIQUEUR

雨

「雨？」
　彼は自分の熱い瞳の扱い方をよく知っている。私の瞳をじっくり見つめ、内側から私を焼くように瞳で語る。
　あなたは感じた？僕の雨を？
　私はゆっくり頷く。
「なんだかめでたい日の雨でさえ愛せる。あなたのおかげね。」
　彼は曖昧な笑顔を浮かべまた目を閉じた。雨と同化するように、自分の感情を雫にするように。知らなかったらよかった。彼の木漏れ日の秘密。誰かのことを思って零す雫は、美しいけど尖っている。少なくとも私にとってのあなたの雫は。
　外に出ると雨は一層増していた。私はもう彼を追いかけることはしなかった。自分から津波に飛び込むことはしないのだ。彼は友人に囲まれて私の知らないところに行く。遠く遠く、ずっと彼方へ。一度だけ私に頭を下げた気がしたけれど、いつも通り、私の勘違いだと思った。