2/17
前へ
/17ページ
次へ
雨が傘を叩くたびに自分の脳みその中に雨の音が響く。 夜の雨は美しいけど一人で楽しむにはフェアじゃない。 「あ、雨。」 たったその一言で私の世界を潤すことができるのに。濡れたアスファルトにただ靴を下ろすだけで特別な一瞬に触れたような湿った音が隣合わせた。静謐な一時が精度を増す。 「なにしてるの?」 私は声の主を捜し視線をあげた。「なにしてるの?」言葉の意味をゆっくり咀嚼していた。家に向かって歩いているときに雨に思いを馳せていた、とでも答えたらいいのだろうか。もしくは歩いている、と答えるべきか。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加