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「あれ?どうかした?」  私の記憶は彼の声で目覚め、自分が返答のモラトリアムを超過したことを知る。 「ごめん、覚えてるよ。月沢くん。」  私は仕方なく初めて会話を交わした時のように自分の中の底辺の言葉を投げた。一つだけ輝いているのは月沢という彼に似合う美しい名前だけだ。 「なにか考え事をしてたみたいだけど?」  彼は私をしっかりと見つめ、まるで音楽を奏でたように息を吐いた。 「考え事…。そうね、あなたのことを考えていたのよ。」  私はベースのような自分の声に彼のギターのような美しい旋律が重なることを好む。 「僕のこと?」 「そうよ。あなたのこと。また会えてよかった。しかもこんな偶然に。」  彼に似合うメロディアスなベースを弾いた私の言葉に、彼はまた少し感情的なギターのリフを聴かせる。 「偶然?確かに。でもあなたが僕のことを考えるだなんて、なんだか不思議だ。だってそんなに会ったこともないのに。」  彼は全てを告げたあと、一瞬顔を曇らせるが訂正の意味合いを込めた笑みを投げかける。すっきりとした鼻筋が陰を作る美しい横顔を街灯が照らす。  しかし私は困ってしまった。彼の言う通りなのだ。直接会って会話を交わしたのは二回。後は私が勝手に彼を楽しんでいただけ。勝手に彼を感じていただけ。 「そうだよね。卒業式のとき以来だよ。元気にしてる?」
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