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その日、俺は仕事が休みでうちにいた。
そこに、一生掛かって来る事はないと思っていた人から電話が来たのだ。
指定された場所へ行くと、そこには呆然と佇む単さんがいた。
「龍司…」
「単さん、どうしたんですか!?」
単さん、目が虚ろだった。
「フランスから電話があって…マリーが死んだって…」
マリーさんって、多分、単さんの婚約者…。
「…一体、どうしたんですか?」
「癌だったんだ。進行性の」
力なく肩を落とす単さん。
「そうなんですね…。そんな事より単さん! フランスに行かなくていいんですか!?」
「間に合わなかった…」
単さんは独り言のように呟く。
「そういう問題じゃないです! マリーさん、きっと待ってます。今から行けば葬儀には間に合うかもしれないから、行って下さい」
俺は単さんの肩を掴んでいた。
怒られるかと思ったけど、単さんは顔を上げただけだった。
「…そうだな。行ってくる」
「はい。気をつけて行って来て下さい」
俺はそう言って単さんを送り出した。
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