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帰国して、単さんはすぐに俺に連絡をくれた。
単さんに呼ばれて行った先は寮だった。
「寮に住んでたんですね」
と言ったら、単さんは表情を曇らせた。
「俺はあの家の実の子じゃないから居づらい」
「すみません」
「いいんだ。それより上がってくれ」
ワンルームの単さんの部屋は、全く生活感が無いように思えた。
「龍司に礼を言わなければと思って…」
「そんな、俺は何も」
「背中を押してくれた。ありがとう、龍司」
「単さん…」
「…今日だけは…泣いてもいいか…?」
単さんは、床に体操座りをして、顔を伏せた。
「当たり前です。…俺はここにいますから」
単さんの肩は震えていた。
俺はしばらく、何も言わずに隣に座っていた。
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