思い出

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後にも先にも、単さんが泣いているのを見たのはその日だけだったと思う。 単さんは少しずつ元気も取り戻して、普段通りになっていった。 単さんは大学を首席で卒業し、医師になり、「居づらい実家」に帰った。 単さん曰く、跡継ぎが生まれないからと養子に来たら、運悪く単さんの下に男の子が生まれてしまったのだという。 父親は責任を感じてか親切にしてくれるが、母親は弟…京一郎を溺愛しているらしい。 「自分の生んだ子の方が可愛いに決まってる」 単さんは言ったが、そんな境遇に耐えてきたかと思うと、俺の方が切なかった。 この頃も俺たちは「友達以上、恋人未満」って感じの微妙な距離感を保っていた。
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