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それが微妙に変わったのは、あの時からかもしれない。
夢だったカフェが開店できると決まった時…俺は一番始めに単さんに知らせたんだ。
すると、単さんは
「おめでとう」
と笑顔で言った後、意外な事を言ったのだ。
「俺を…雇う気はないか」
「へ?」
「だから、俺をギャルソンとして雇ってくれと言っている」
それから、
「二度も言わせるな」
と呟いた。
「だって、病院はどうするんですか?」
俺はまだ信じられなかった。
「辞めた」
あっさり言う。
「ええ!?」
「…京一郎が医者になったから…もういいだろう」
単さんは悲しそうな顔をした。
そんな顔を見るのはこっちが辛い…。
単さん、京一郎が医者になったら、後継者の座を譲るつもりで…。
それは、単さんの悲痛な決意。
「それじゃあ、ギャルソンお願いします。…給料は安いですけど」
敢えて明るく言った。
単さんの居場所を作りたかった。
「そんなのわかってる」
単さんが微笑んだので安心した。
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