思い出

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抱き締めた単さんからは、何とも言えない良い香りがする。 「俺なんか、とか言わないで下さい。俺にとっては、単さん以上の人なんていないんですから」 単さんはもぞもぞ、俺の腕の中を抜け出して、襟元から何かを出した。 「俺は、これを外す事は出来ない。それでもいいのか」 単さんが俺に見せたのは、ペンダントの先に光る、指輪だった。 ダイヤらしき石が付いている事から、婚約指輪だと思われた。 「これは、俺がマリーに贈った物だ。死ぬまで、彼女が身に着けていた…」 単さんはふっと目を伏せた。 「外す必要なんてありません。単さんの一部でしょう?」 「…お前ってヤツは」 単さんは小さく呟くと、背伸びをして顔を近付けてきた。
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