思い出

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友達と遊びに行く時に乗った電車で、あの人を見かけたのだ。 栗色の髪、大きな瞳、長い睫毛。伏し目がちで本を読んでいたあの人…単さんはとても綺麗で、天使のようだった。 小柄で華奢で、顔立ちも性別不詳な感じだが、男子校である、泉ヶ丘学院の制服を着ていたから、男子だとわかった。 当時、俺には男を恋愛対象にする趣味はなかったが、視線を彼から外す事ができなかった。 そう。 一目惚れだったんだ。 その後も電車で彼を見かける事はあったが、声を掛ける事はできなかった。 それでも、彼に近付きたいとは思って…だから、俺はあの人と同じ泉ヶ丘学院に入ろうと決めたのだった。 あの頃の俺の成績から言って、泉ヶ丘学院に入るのはほぼ不可能。 担任からも絶対無理だと言われた。 しかも、俺が入学しても、彼は入れ違いで卒業してしまっている可能性だってある。 だが、俺は諦める訳には行かなかった。 少しでも接点が欲しかったのだ。 だからこそ、死に物狂いで勉強して、何とか泉ヶ丘学院に入学したのだった。
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