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一階に下りるとこたつで寝転がっている義文と家内がいた。
どうやら「新春異端芸祭」を見ているらしい。
二人ともつまらなそうな顔をして楽しんでいるようだ。
「あっ! 親父……いたのか……」
(いたわっ! 呼んどいてそれはないだろ!)
テレビに釘付けになっていたが、ようやく気付いたようだ。
いや? ただ単に私の存在感が無いだけか?
私事ながら後者に一票。
「用とは何事ですかな?」
何のこと? と一瞬首をかしげやがったこのクソガキ。
すぐに思い出して、
「ああ、確かに30秒前に呼んだ気がするなぁ」
大量に心の涙が流れたのと同時に背筋が凍るような寂しさに取り巻かれた。
「で、その用事なんだけど、その…つまようじ買ってきてよ」
「あれ、つまようじ切らしていましたっけ?」
「いや……用事だけに'つま用事'買って、プッ、きて。ぶッーーー! あはははははははっ! やべぇ、笑い死ぬーっ! あはははははは。親父、俺を笑い殺す気か? 親父だけに親父ギャグで! あははははははははははは。チョーつまんねーよ。ジジィ死ねよぉっ!」
「………………………」
その刹那、居間が静寂に包まれた。その静寂は静かで心安らぐものではさらさらない。その真逆で単刀直入、殺意の固まりでしかない。
家内がテレビに夢中になっていた……例により、クソガキを9/10殺しにした。
「マジ、親父ごめん。…で本題だけど今の仕事現場でチェーンソーいるんだよ。ゴホッ! それを頼みたいんだけど。オエッ」
「承りましたっ! では街巡りのついでにチェンソーを買ってきます」
と言い残して家を離れた。
正直、家内との接触がなかったので少し頬が緩んでいる事はこの上ない至福です。
などという余談を言う余裕さえあります。
確信しました。今日はヘヴンデイ(天国のようにすばらしい日)だということを。
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